toggle
2018-02-26

『風の道づれ・ふらふら絵草紙』(絵草紙・山福康政 写真・岡友幸)

8年ほど前、古書店店主に薦められて手に取った山福康政さんの
『風の道づれ・ふらふら絵草紙』。
何度も見返す、自分にとって大切な一冊。

 

内容は、およそ30年前、1986年4月から2年間に渡り、
西日本新聞福岡県版に百回連載されたもの。
いまだ記憶に残る北九州、筑豊、福岡などのあちこちの町の風景とともに、
そこを舞台に活躍する方々との交流がユーモアとペーソスに溢れる
画文で綴られている。

 

全編手描き!
予備知識なく開いてみて、まずは絵と文のエネルギー、
情報量の多さに圧倒された。
面白くて面白くて夢中になって開く。
登場する人物はあの人この人…100人は超えている。
いまだ遺る風景と、失ってしまった風景が頭に浮かぶ。
時代の空気感もありありと伝わってくる。

あとがきを読んで2度びっくり!
脳血栓、右半身が不自由…
携帯もパソコンもデジカメも普及していないこの時代、
取材から完成までに費やされた時間はいかほどか。
こんな人物が北九州、若松にいたとは。
驚きの連続。

 

 

ユニークな絵には、人々へのあたたかなまなざしが感じられ、
文章は一人一人に向けた応援エールのようにも思えてくる。
中には、上野英信さんや石牟礼道子さん、武田百合子さんとの
エピソードも盛り込まれているが、
有名無名はまったく関係なく接していたであろう
康政さんの生きざまも伝わってくる。

 

こうして虜になって以来、この本や『昭和庶民絵草紙 ふろく』など、
少しずつ著作群を集めている。興味を持ってくれた方には勝手に
おすすめ(つかまっちゃった方、すみません)。
康政さんの本は、絶版のため今では古書店などでしか手に入らないのが残念。
もっと手にする機会あれば、と切に願う。

 

いよいよ今週末から、山福康政さんの仕事展が
長女・朱実さん監修のもと開かれる。

 

康政さんとはいかなる人物か。
読めば読むほど新しい発見に満ちたこの本のように、
きっと仕事展にもたくさんの驚きが隠されていることだろう。

 

勝手ににやにやしている。

関連記事